お腹が空いている。思えば朝から何も食べていない。時刻は午後3時。グダグダとしていたらこんな時間になっていた。家に食べるものはほとんど何もない。(家にあるのはまだ炊かれていないお米ぐらいのものだ。)スーパーに行って、お昼ご飯買ってくるしかないか。
外を歩くときにはいつも音楽を聴く。今日もイヤホンを持って外に出る。さて、音楽を聴こうかと、ポケットの中からスマホを探す。
そういえばスマホ、ポケットに入れたっけ?
そう思ったときにはもう遅い。もちろんスマホはポケットに入っていない。(なんせ入れた記憶がないのだから!)だからといって家に取りに帰るのはめんどくさい距離まで来てしまっている。そもそもちょっと近所に買い物に行くだけなんだから、家にものを取りに帰るのはあまりにもタイムロスだ。
しょうがない。今日はイヤホンをつけずに歩こう。
ふらふらと歩いていると、交差点のところで左側から親子連れが歩いてくる。おそらくお母さんと見た感じ3歳くらいの女の子。何か二人で会話をしているようだ。今日はイヤホンをつけていないから会話が耳に入ってくる。
「結婚式はしなかったの。」
「ケッコンシキ?」
「そう。」
「なんでしなかったの?」
「お父さんがいやだって言ってね。なんか会社の人が来るのがいやだったんだってさ。」
「だけど、 ooooxxxx・・・」
どういう流れでこんな話をすることになったんだろうと思った。3歳くらいの子供にそんな話する?それも何でもない道ばたで。でもそれだけ仲のいい親子ってことなのかもしれないね。
もっとその話を聴いていたかったけど、何ならどうしてそんな話に至ったのかもききたかったけど、流石に立ち止まって話を聴くわけにもいかないので(そんなことをしたら不審者だ)、その二人の前をすうっと歩いていく。僕はスーパーに行ってお昼ご飯を買わなきゃいけないのだ。
スーパーに到着して、お昼ご飯を購入。なかなか美味しそうだ。早く帰って食べよう。スーパーから出ると、店の前にさっきの親子連れとは違う親子連れが歩いている。お母さんと、5歳くらいの男の子。
ゆっくりと歩いていたはずの男の子がスーパーの真正面に差し掛かると突然その足を止めた。そして母親を見つめる。何かを察する母親。そして子供にこう伝える。
「今日はお菓子は買わないよ。」
その言葉を聞いて泣き出す子供。彼に止めた足を動かす気配は全くない。母親は少し笑いながら
「泣いたってだーめ、今日は買わないよ笑」
と言って彼の手を引く。親子の攻防。
たぶん普段はお菓子を買ってもらっていて、それを経験的に覚えている男の子が、お母さんにおねだりしているという場面なのだろう。怒らないで笑いながら子供に買わないことを伝えていたことから察するに、あのお母さんは優しい人なんだろうな。
本当はそのお菓子を巡る攻防を見届けたかったが、そこで立ち止まってきいているわけにもいけないので(そんなことをしたら不審者だ)、その二人のわきをのそのそと歩いて行く。僕は早く家に帰って、この手に持ったこのご飯を食べなければいけないのだ。
帰り道で、「ピッピッ」と笛の音がきこえる。なんだろうと思って音がきこえる方を見てみると、小学生たちが隊列をなして歩いている。先頭の男の子が笛を吹きながら歩いているらしい。なんか楽しそうだね。僕も隊列に入りたいくらいだよ。
家の前には小学生たちが会話をするためにたむろしている。
「ooが xxで △△ だったんだよ!」
ドッカーン!
小学生たちにはばかうけだ。そうやってどこかにたまって何でもない話しているの楽しいよね。いや、何でもない話じゃなくて大事な話なのかな。何にせよ僕もそういう話、好きだよ。
家に着いて、買ってきたものを食べながら思う。
イヤホンをつけずに歩くのもアリかも知れない。世界から聴こえてくる予測のできないことは、けっこう面白い。